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こんなにも……
こんなにも、一人の男を独占したいと思ったのは初めてだ。
最低で、最悪の奴だと思っていたのに…
いつの間にかこんなにも夢中で…
離れていってほしくなかった。
「っ…さ、やくん!」
「…ッ…」
簡単に、何の名残もなく離された唇と身体。
急に去ってしまった温もりに寂しくなる。
どうして離れていっちゃうんだよ…違うのに、違うんだよ…
「…違うんだよ…、あいつは」
「ごめん…」
何に対しての謝罪…?
「今の紗弥くんに…こういうことされても、嬉しくない…」
呆然としている間に、金髪青眼は俺の前からいなくなってしまった。
…んだよ、今言おうとしたのに…
「ちゃんと…人の話…聞けッ」
とめどなく溢れてくる涙を止めるすべを俺は知らない。
だから、自然に枯れて乾いてくれるのを待つしかなかった。
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