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静寂。
一切の物音すら聞こえない広い武道場で、僕は胡坐をかいて精神統一していた。
杉原先輩の試合で自覚させられたが、今の僕には手札が多いだけで確実な決定打に欠ける。
夕闇式陰陽術第四章は必殺技と言えば必殺技だが同時に自爆でもある。
一対一でしか使えない上、リスクが高すぎる。あれでは戦えない。
ではどうするか?
手始めに僕は資料をあさってみた。超能力と違い陰陽術は起源が一つなので、他の術師から応用の利く術式を学べることが多い。
恭也や朔夜に僕が勝る点を言えば、まさしくここ。術式のバラエティ(正確にはバリエーション)が多彩であり尚且つ、上達しやすいところだ。
恭也のように破壊的な一方通行(ワンサイドゲーム)は限られた人間にしか不可能だし、朔夜のような姑息な戦法は不向き。
ならば僕は僕なりの戦い方を見つけなければならない。それが、コレである。
閉じていた目蓋を薄く開き、新しい術式の存在を確かめる。
──結界術──。
護る為のちから。
古くは平安、否。もっと以前から多くの陰陽術師によって改良を加えられ現在に至る結界は、想像以上に強固で力の消費の高いものだった。
ただし、形成所要時間に三分弱。しかも術式の展開中には莫大な集中力を必要とする。
間抜けな話、こんなものを防御術に組み込めば発動中に奇襲をかけられて終わりじゃないのか?
大きさは申し分ないとしても、そもそもこれは実戦向きじゃない。
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