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全長二メートルを越す透明のガラスみたいな結界が弾けて消える。
「あー、なにやってんだろ……僕」
事質、あの模擬戦で負けたのはリーダーである僕だけだ。
別に、自分が強いなんて自惚れるのは恭也に負けて以来していないし、事実僕が杉原先輩に勝てる道理も今となって考えてみればなかった。
だけど。
それじゃ駄目なんだよ。あの二人にリーダーを任された身として。
たった三人とは言えグループの頂点に立っている立場として。
「僕は一番、負けちゃいけない。エースである恭也以上に、負けることは許されないんだ」
その分、信頼されたとは言えあれだけあっさり降参できる朔夜は気楽でいいよな。
あの身のこなしの軽さは、背負うもののない軽さなのだろうか?
いや、そうじゃない。あいつはあいつなりに背負うものがあったし、戦う理由も持っていた。結局、僕は心のどこかで甘えていたのかもしれない。
「次、行ってみるか」
短く呟き、筆を走らす。
マテリアルは闇。
キャンパスも闇。
顕す字さえも《闇》。
夕闇式陰陽術第二しょ……。
「馬鹿かテメェは」
背中を蹴り飛ばされた。
「なにしてんだか知らねぇが、“ソレ”は練習とか修行で使っていいもんじゃねぇだろォ。下手すりゃ、あの意味のわからねぇ空間爆発よりも危険だぞ。テメェの体がな」
集中しすぎて気付けなかったが、いつのまにかに背後の扉から入ってきたらしい。
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