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詳しくは聞いていないが、恭也の親友が死んでから、とにかくこいつは暴れた。一時は警察沙汰になるくらいに暴れて暴れて壊し尽くした。
何かを探し求めるように拳を握り、誰かに救い求めるように体を血に濡らして。
その頃から恭也のあだ名は誰が付けたか《黒羅刹》になっていた。当然、同じ学校にいた僕にもその噂は届く。
当時自分の力を過信して、曲がったことが嫌いだった僕は恭也に会いに行った。同じクラスの女の子が恭也の手によって病院送りにさせられたからだ。
始めは、怒りで恭也に立ち向かった。しかし、拳を交えた途端にあいつの痛みに気付いてしまった。同時に、自分の弱さに気付いてしまった。
泣きたいのを我慢して。謝りたくてもできなくて。自分の責め方も知らない黒羅刹は、周りを壊すことでしか感情を表せない。
だったら僕がはけ口になってやろう、と決心した。
こいつの苦しみも悲しみも全部僕が受け止めて、それで進んでくれと願望した。
僕が凪さんにそうされたように、僕がお前を助けてやりたい、と自惚れた。
お前は僕のライバルだから。お前は僕の昔だから。誰かに心を開いてもらえないと接し方もわからないお前や、他の誰かのためにも。
僕はだれにでも心を開くと自分に誓ったんだ。
振り下ろされた撃鉄が、儂の顔面をかすれて畳を叩く。それ以上の追撃はこないまま、恭也は前髪で目元を隠す。
「な……んだよ?もう終わりか?」
あちらこちらが痛む体を起こして切った唇の痛みに顔をしかめながらそれでも口を開く。
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