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†††
目覚めた時間は7時前。
凪さんが扉を叩く音を合図に僕はベッドから起き上がる。
「おはようございます夕様」
何から何まで精練された動作で丁寧に彼女はお辞儀をする。
「だから、様付けはやめてください。貴方には感謝しきれないぐらいの大恩があるんです。逆に僕が」
言い掛けたところを彼女の人差し指が僕の唇に触れて中断された。
「そんな哀しいこと仰らないでください。私は好きで夕様に仕えているのですよ?それじゃまるで、辞めてほしいみたいじゃないですか」
いや、辞めてほしいんですけどね。
僕ではなく、父さんに仕えればいいのに。
なんてことを言い出した日には泣かれてしまったのでもう言わない。ただし最低限の譲歩として様付けはやめてください。
「そう言えば恭也は?」
「はい、客間でまだ眠っておられます」
…………ふてぶてしい奴。いや、朔夜よりはマシか。
模擬戦のあとにあいつは父親がうるさいからと言って寝るためだけにうちに押し掛けてきたからな。
結局、朔夜は20時から12時までぐっすり睡眠してご飯だけ食べて帰っていった。
厄介すぎる。
そんなことがあったからだろうか、凪さんは戸惑いながら僕の顔色を窺った。
「心配しなくても、朔夜よりはマシですよ。遅くとも8時には目を覚ますでしょう」
微笑みながら助言してリビングへと向かう。
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