夕闇夕の苦労

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食事は父さんと二人きり。他愛のない会話を交わし、いつも通り美味しい朝食を喉に通す。本当は凪さんにも同伴してもらいたいのだが彼女は彼女で多忙なのだ。 いつかまとめて恩返しさせてもらおう。 登校の準備が全て終わった辺りで恭也が会談から降りてくる。前髪をゴムで縛り、不機嫌そうな瞳をこちらに向けた。 「テメェん家は客人の眠りを妨げてまで使用人が掃除しにくんのか?」 基本的に掃除好きな人が多いし、この時間帯は掃除してるもんな。むしろ掃除しないと落ち着かないんだろう。 無論、朔夜はそれでも寝てたが。 「誰が客人だ。それよりそろそろ出ないと遅刻するぞ?」 「序列持ちは大抵許されんだよ」 嫌な制度だな、と皮肉めいたことを言う僕に対して恭也はあくびを返す。それから、階段の手すりに手を置いてそこを支点に飛び降りた。 「ハッ、行ってるだけマシだろ。二年の序列持ちなんざほとんど不登校状態じゃねぇか。むしろ来てる俺様は感謝されるぐらいだな」 「何をふざけたことを……。二年生の序列持ちだって不登校なのは四人だけだろ」 入学式の時、学年主任が『序列持って調子に乗りすぎるな。二年の四人組みてぇに不登校になんぞ』と言っていたのを思い出す。 その内の一人が、《ナイトメア》の補欠。学園序列第二位の三神だ。詳しくは知らないが、杉原・三神・富田の三人は理事会からも好評らしい。 つまり、杉原先輩と互角レベルの二年生が《ナイトメア》には所属している。 不登校状態の三神が試合に参加するのは考えにくいが、恭也は元々三神とケンカするために《ナイトメア》に宣戦布告したようなものだし、色々と不安はある。 こいつは前哨戦とでも謳って個人的にケンカしに行く可能性が高いからな。
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