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さっさと救出しないと本格的に遅刻してしまう。
僕は近くの塀を足がけにして、その木にしがみつく。当然、登るつもりだ。
「愚直な……。踏み外シて落ちテも知らナイぞ?」
「大丈夫、だと思う」
控え目に答えて枝を足がかりに乾いた木を登っていく。冬眠中の虫とかが落ちてこなければいいけど……。
上へ登っていくうちに、足がけとなる枝がどんどん脆いものになる。さっきから足元がミシミシと軋んで嫌な汗が背中に滲んでいる。
「おイ!!もう止めテオけ。ほんとうに落ちるゾ!?」
下から女の子の叫び声が聞こえたが無視して登る。子猫はもう目の前だ。
と、ここで思わぬアクシデントが起きた。
「フシャー!!」
何を勘違いしたのか子猫が僕を威嚇したのだ。それもこう、なんと言うかかなり本気で。ここまできてその仕打ちはひどくないか?
まぁ、いい。のりかかった泥舟だ(←うん、沈むね)。引っ掻き傷くらいどうってことな……。
目先で子猫が猫パンチを繰り出してきた。眼鏡に。
「ばか、夜以外は視力も低下してるんだって!!」
一瞬にして視界がぼやける。それを勝機と見たのか、子猫は僕の頬を引っ掻き、小さな牙で噛み付いてきた。
「うぎゃ、痛っ!!」
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