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「え?これは・・?」
小銭を拾おうとして自販機の下を覗くとスリーブ付きの、黒いカードが一枚落ちている。
地べたに落ちているにも関わらず、表面には傷一つついていない。
うっかり誰かがこの場所で落としたのだろうか?随分と大切に扱われていたようだ。
カギとか、定期とかではなさそうだが・・・。
「な~に?それ」
何やら手にしたカードをチカチカと太陽にさらしたり裏返したりしながらじっとその場を動かない樹が気になるのか、明日香がぐいっと手元を覗き込んできた。
「ん?ああ、これか?多分・・これはAIカードと言って、今、ほら、ゲーセンで流行ってるゾロ式ってゲーム!あれに使うカードさ」
「ああ、それなら知ってるわよ。こないだ行った時さ、行列出来てたもんね。やっぱりあれって、そんなに面白いのかな?」
「んー…良くは知らないけど、俺は見てただけだしな。ただ・・・・」
そこまで言って樹は手を止めた。
(このカード・・おかしい・・・・おかしいぞ?)
「な~にブツブツ言ってんのよ、そんなの良いからさ、早く行こうよ~!」
隣ではすっかり待たされた明日香が不機嫌そうに頬をぷうと膨らませる。
「いや、ちょっと待って」
ちょっと、気になるんだ。このカード、変だぞ?
「何が変だっていうの?私からすれば何処にだってある普通のカードだけど・・」
「いや、だって、これさぁ・・・・・」
「うん、何?」
首を傾げながら、難しい表情で考え込む樹を見て、怪訝そうな表情を見せる明日香。
大抵の場合、樹がこういう状態になるときは何か不自然な事、腑に落ちない点を見つけた時だ。
幼なじみなのだからそれくらいの事は明日香にはすぐに分かる。
「これ、まるで新品だし、侍?って書いてるけど、見た事ないぜ。こんな絵柄。」
「新発売のカードじゃないの?ほら、出たばっかりの・・とかさ」
「うーん・・・・恐らく、それは違うな」
「どうして、そう言い切れるの?」
(・・久しぶりに見たわよ、あんたのそんなカオ・・――)
あの優柔不断で面倒臭がりな樹がこうもキッパリと何かを言い切るのは珍しい。
このカードには何かある。それを直感で感じ取った明日香の表情も段々と真剣味を帯びてきた。
「まず、こいつはさ――・・・・・」
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