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……雪が降るかも、か。
さっき香里が冗談で言っていたことを思い出す。そう言えば、お母さんもそんなこと言ってたっけ?
お母さんも冗談なんだろうけど……でも今日はいつもと比べて寒い気がする。
「でもまだ十一月だもんね」
独り言のように私は呟いた。当然のように香里はなにが? と聞いてくる。
「雪。もう降るのかな? って思って」
「そうねぇ……」
香里はそう言うと空を見上げた。そして雲一つない青空を見ながら話し出す。
「この青空で、降ると思う?」
「ん~。でも、午後から曇るって天気予報で言ってたよ」
「そうなの? でもさすがに雪は降らないでしょ」
私もふと空を見上げる。空はやっぱり雲一つない青空で、これから曇るなんて考えられなかった。ましてや雪なんて降るわけがない。
「でもまぁ」
香里は視線を空から私の方に向けると、腕時計を指差しながら言ってくる。
「雪が降ろうが雨が降ろうが何でもいいけど、ちょっと早歩きで行かない?」
香里の腕時計を見て時間を確認する。
「そうだね、このペースで歩いてたら遅刻だね」
「……いつも思うけど、名雪って本当にマイペースよね」
「よく言われる」
「……そうよね」
香里は苦笑いをしたあと早歩きで歩き始めた。私もそれに続いて歩き始めたんだけど……。
なんだか雪という言葉が頭から離れなくて、終始歩きがゆっくりになってしまった。
雪……。七年前……。祐一……。
「名雪!」
歩きがゆっくりになる度に香里が私の名前を呼んで歩くペースをあげようとする。私はその度にごめんね、と香里に謝る。けどやっぱり歩きはゆっくりになってしまう。
祐一……。相沢、祐一……。
今、祐一は何をしてるのかな?
元気に暮らしてるのかな?
私のこと覚えてるのかな?
……祐一に、私の思い、伝えたかったな。
私は学校に着くまで、そんなことをずっと考えていた。
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