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「今日より魔導清革(グランギニョル)軍第φ支部に配属になりました闇月智香(おんげつちか)です。」
そう言って、智香は黒服の男に対して敬礼した。
彼女は大体16才くらいだろうか。長い髪や目は全てを飲み込んでしまいそうなくらいに黒い。何より特徴的なのはその一点だった。
黒服の男は大仰に頷くと
「うむ。君の話はかねがね聞いている。ハグレだそうだな。」
と言った。
プライバシーも無視した男の言い種に頓着せず智香は答える。
「はい。第3支部に務めていた園生カイの人形(アテンダント)を務めていました。もう死にましたが」
すると男は顔をしかめ、
「人形という言い方は止めてくれ。僕たちが一番嫌いな言葉だ。」
「分かっています。しかし、私たちが人形であることには変わりないのです。特に私は操縦者(リーダー)を失ったハグレですからこの軍に仮に従属しているとはいえ、人間と同じ扱いをしていただけるような身分ではありません。」
人形―――ー。強大な力を有するが人間がいなければ創り出されることも動くこともできないが故に権利を認められない存在。
魔導清革軍は人形の権利を認めさせる為に動いているのだった。だから男が人形という従者(アテンダント)の意味を含ませた呼び方をするのは当然だったと言えよう。
気まずい沈黙が両者の間に流れる。やがて、沈黙に耐えきれなかったのか、男がしゃべり始める。
「うちでは人形も人間も相棒(パートナー)で統一なんだが……」
「……」
「……君もなかなか強情だな……。まぁ、ハグレの話を持ち出した私が悪いのだが……。とりあえず君に任務を与える。君にはNo.11とこれからは行動を共にしてもらおう。」
「……了解しました」
命令を受けた後、智香は長い廊下を歩いていた。彼女の主となる者を探して。彼女の任務はまずそこから始まる。
このφ支部は空間軸が歪んでいるため、自由に歩けないので行きたい場所に行くことが難しい。
(軸を歪めるのは精神を鍛えるため、とか言っていたよね。でもこんな物で本当に鍛えられるのかな?)
と思いつつ歩いていた智香は目当ての部屋を見つけた。
発見してから二十分。
ようやくたどり着いた智香の目の前にあるのは黒い扉であった。その扉にはノブが無く、かといって分かれて開くような継ぎ目があるわけでもなかった。
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