記憶

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「君はこの城で待っているといい。私の屋敷にある、占いに必要な物を持ってこさせよう。 それを持って、占い師の元を訪ねてみなさい。何か良い手立てがわかるかもしれない。 知らないなら、知ろうとすればいいんだからね」 公爵さんは珍しく、ちょっと子どもっぽい笑顔を見せた。 年相応。 「……え、いや、でも……わざわざ悪いですし…」 「気にしなくていい。私が提案したことだからね。 さぁ、帰るぞ」 私にニコッと笑ってから夫人を呼び、女王様に一礼すると、扉に向かって歩き始めた。 ……いいのかなぁ、頼みっぱなしで。 私のことなのに………。 《思い出したいなら、この国ともっと関わるといい》 ふと、時計さんの言葉を思い出した。 関わる……受け身じゃ駄目ってことだよね。 思い出したいなら自分から行け、と。 ……でも公爵さんの言葉も気になる。 『知ることが幸せに繋がるとは限らない』 この国は優しいし、楽しい。 だから思い出すことだってきっと素敵な思い出のはず。 ……はずだけど、世の中そう上手くはいかないということもよくわかっている。 思い出せないのには、何か理由があるのかもしれない……。………………でも 「………こっ…公爵さんっ!」 大声で公爵さんを呼び止める。 大広間に私の声が響いてエコーが……。 「………アリス…どうしたんだい?」 振り返ってちょっと驚いた表情を浮かべる公爵さんに、私は思い切って言った。 「……あのっ…私も行きます。 行かせてください!」 もう目を逸らさないって決めた。 だったら最後の最後まで向き合おう。 この国も私にとっては大事な世界。 だから知りたい、思い出したい。 そして国の皆で 前はあんなことあったねー、なんて笑い合えたら きっと楽しいよね。
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