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「その1、キッチンにはなるべく近づかないこと」
「……キッチン?」
何故キッチン?
キッチンにトラップが仕掛けてあるのかな?
「………以上」
「1しかないのか」
その1とかいらないね。
「……あとはキッチンに着いたら話すよ」
と言い公爵さんはスタスタと屋敷の中へ入っていく。
……ん、待てよ。
「キッチンに近づいちゃいけないのに、キッチン行くんですか?」
「そうだよ」
それ、注意の意味ないじゃん。
「近づいちゃ駄目なわけじゃないわよ?近づかない方がいいってだけ。
だから大丈夫よ!」
それ、大丈夫って言いませんよね。
なんか皆悠然と歩いてるけど、不安なのは私だけなの?
近づかない方がいいキッチンなんて……必ず何かしら曰く付きなんでしょう!?
公爵さんのお屋敷はとても大きい。さすがにトランプ城とまではいかないものの、大きく豪華で重そうな扉に高い天井、立派なシャンデリアに広々とした廊下。
圧倒される、普通なら。
……いや、私も普通なわけで。圧倒されるはずだけれども。
そんな素晴らしいお屋敷に見惚れる暇もない程、その近づかない方がいいキッチンに気を取られていた。
「……そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だ。
入室方法さえ間違えなければ何も恐れることはない」
口数の減った私を安心させようと、優しく肩を叩き微笑んでくれる公爵さん。
……つまり、入室方法を間違えたら恐ろしいってことね…。
結局不安なまま私達はある扉の前にたどり着いた。
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