キッチンには気を付けろ!

3/26
前へ
/462ページ
次へ
「その1、キッチンにはなるべく近づかないこと」 「……キッチン?」 何故キッチン? キッチンにトラップが仕掛けてあるのかな? 「………以上」 「1しかないのか」 その1とかいらないね。 「……あとはキッチンに着いたら話すよ」 と言い公爵さんはスタスタと屋敷の中へ入っていく。 ……ん、待てよ。 「キッチンに近づいちゃいけないのに、キッチン行くんですか?」 「そうだよ」 それ、注意の意味ないじゃん。  「近づいちゃ駄目なわけじゃないわよ?近づかない方がいいってだけ。 だから大丈夫よ!」 それ、大丈夫って言いませんよね。 なんか皆悠然と歩いてるけど、不安なのは私だけなの? 近づかない方がいいキッチンなんて……必ず何かしら曰く付きなんでしょう!? 公爵さんのお屋敷はとても大きい。さすがにトランプ城とまではいかないものの、大きく豪華で重そうな扉に高い天井、立派なシャンデリアに広々とした廊下。 圧倒される、普通なら。 ……いや、私も普通なわけで。圧倒されるはずだけれども。 そんな素晴らしいお屋敷に見惚れる暇もない程、その近づかない方がいいキッチンに気を取られていた。 「……そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だ。 入室方法さえ間違えなければ何も恐れることはない」 口数の減った私を安心させようと、優しく肩を叩き微笑んでくれる公爵さん。 ……つまり、入室方法を間違えたら恐ろしいってことね…。 結局不安なまま私達はある扉の前にたどり着いた。
/462ページ

最初のコメントを投稿しよう!

628人が本棚に入れています
本棚に追加