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「……ここがキッチンだ」
私はゴクリと唾を飲み込む。
この中に一体何が……
「さて、ここでキッチンへの入室方法を説明しよう」
突然の入室講座。
……なんか面接練習みたいだね。
「その１、ノックする」
公爵さんが言った後に夫人が扉を３回ノックする。
２回じゃトイレのノックみたいだもんね。
「ここが重要だ。
ノックをした後、誰かと尋ねられたら名を名乗る。
どうぞ、と言われたら引き返す」
「……………はい？」
いきなりハテナが５個程飛び出しました。
許可おりたのに入っちゃ駄目なの？
「どうぞ、というのは
入っても構わないが、どうなっても知らないぞ。それでもいいというのなら、どうぞ。
というものの省略形だからだ」
ちょ、省略し過ぎ！！
というかその一番重要な所省略しちゃ駄目でしょうっ！
１人衝撃を受けていると、扉の奥から女性の声が聞こえてきた。
「……どなたですか？」
……尋ねられた…んだよね？
ちょっと安心。
「あー、あたしあたし」
夫人、名乗りましょうよ。
オレオレ詐欺ならぬ、あたしあたし詐欺。
「……あ、夫人ですか。どうぞ」
……あたしあたしでわかっちゃう辺り、さすがは使用人さん。
…………あれ？
「……今、どうぞって言われましたよね？」
じゃあ結局入れないじゃん！
「いや、尋ねられてから言われた分には問題ないよ」
や、ややこしい……
と、ここで夫人はなんのためらいもなく扉を勢いよく開けた。
近づかない方がいいキッチン……一体どんな世界が広がっているの！？
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