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「はーなーしーてー!」
「そっちこそ諦めなさい」
相変わらず放してはくれないようで、両方に引っ張られているわけですが。
やはりそこは大人と子ども。
年齢はどちらも大人であるものの、公爵さんの見た目は子どもだから夫人には適わない。
どちらかというと私は夫人側に引っ張られ、さっきいた場所からだいぶ移動していた。
「……あの、痛いんですが…」
「ほら!痛いって言ってるじゃない!!」
「君が放せば問題無いだろう」
「………」
さっきからこれの繰り返し。
……もう、どっちでもいいよ。
「……めんどくせえな。
ちょっとくらい夫人に付き合ってやればいいだろ」
見兼ねたチェシャ猫がやっとこさ後ろから口を出してきた。
遅いんだって!
「あら!やっぱり猫くんは話がわかるわぁ」
夫人はニコニコしながら引っ張る力を強める。
公爵さんは子どもの姿ながらも険しい表情を見せ、頑張る。
「……彼女の特別ルームは、薬の調合室になっているんだ」
あぁ、そういえば夫人、趣味は薬の調合って言ってたっけ。
ちょっと面白そうだけど……
「……ちょっとくらいなら行っても………」
「忘れたのかい?
私が子どもの姿になったのは、彼女の薬のせいなんだぞ?」
「やっぱ戻りましょうか」
「…切り替え早」
当たり前でしょ!
私まで小さくなっちゃったらどうするの!
「あれは……ちょっと失敗しちゃっただけでしょ!?
いつもいつも小さくなる薬ばっか作ってるわけじゃないわよ!」
「あぁそうだな。
この前はフタを開けた瞬間火を吹きながら飛び回る薬、その前は触れた物を全て緑色の液体に溶かす薬、更に前は飲んだ者がキノコの種類を喋り出して止まらなくなった薬、更にその前は」
「戻りましょう!!」
「えぇっ!何でよ!?」
当たり前ですっ!!
私は緑色に溶けたくないし燃えたくないしキノコ博士にもなりたくありませんっ!!
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