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公爵さんの静かだけど怒りの籠もった声に、この場の全員が黙り込む。
顔を上げた公爵さんの瞳は鋭かった。
子どものはずなのに、思わず冷や汗が流れてしまうような、そんな威圧感がある。
「……聞こえたか?
アリスを困らせるのを止めなさい」
「……でも…」
「でも、じゃない。子どもじゃないんだから、少しは聞き分けよくならないか。
ふざけるのも大概にしなさい」
「…………っ」
公爵さんに睨まれ、さすがの夫人も黙り込んでしまう。
……なんか、ちょっと可哀相…
「………………なによ」
「…………夫人?」
俯いた夫人は小さな声で呟いた。
よく聞き取れずに聞き返すと、勢いよく顔を上げた。
夫人は今にも泣き出してしまいそうな表情を……って、え!?
「ちょ、ふじ…」
「なによ……なによ何よ何よぉっ!!
さっきからアリスアリスアリスって、あたしとアリスどっちが大事なの!?」
「……は?何言って…」
「アリスがいいんでしょ!?
ワガママで子どもっぽいあたしなんかより可愛くて素直なアリスの方がいいんでしょう!!
だったらアリスの旦那にでもなればいいじゃない!
馬鹿ッ!!もう知らないっ!!」
いつも以上のマシンガントーク。声を張り上げて公爵さんに訴えると、とうとう来た道を逆走していってしまった。
……え、夫婦喧嘩!?
「……三角関係か」
ドロドロね。ってか私のせい!?
私のせいで家庭崩壊!?
うそ!どうしよう!!!;
「…………………はぁ」
公爵さんは私の腕を放し、頭を抱えてため息1つ。
……子どもには見えない、苦労しっぱなしで疲れはてる大人に見えた。
「……あ、あの……すみません…………私のせいで…」
ってか私、何もした覚えないんですけど。
小さく謝罪すると、公爵さんは苦笑した。
「……いいんだ。よくあることだから」
よくあるんだ……。
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