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「どうなんだ、調子は」
「良くも無く、悪くも無くって感じだ」
「痛みは」
「ないけど……」
俺がそう言うと、ぱさりと上着のシャツが床に落ちる音がした。
と同時に、ビノの唸る声が聞こえてきた。
「……ビノ?」
俺は背中をビノに向けたまま尋ねる。
「もしかして、広がってんのか?」
俺の背中を、顎に手を添えてじっくり見ていたビノは、声を絞り出すように答えた。
「……あぁ」
ビノが凝視する俺の背中。それは普通のそれとは大分外見が違っていた。
普通であるなら健康そうな肌色であるはずの俺の背中は、ひたすら真っ黒に染まっているんだ。
よく見れば、細かい文字のような形状の物で埋め尽くされているのがわかるだろう。みみずがのたうち回ったようなそれが、俺の背中一面に広がっていた。
・・
背中に顕れる、黒いあざ。
この世界で、それが表している意味は一つしかない。
俺は自分の横に立て掛けてあった鏡にちらりと目を向けた。体を捻って自分の背中を確認する。
やっぱりな。思ってた通りだよ。
「やっぱ広がるよなー、人工混血痕」
そんな俺を見て、ビノは溜め息と同時に尋ねる。
「“やっぱ”?」俺はビノを見上げた。
「あぁ。きっと、ラインエイジになるから、俺の『血』も張り切ってんだ」
あーあ、と俺は頭の後ろで腕を組む。
「ちゃんと、ラインエイジになったらこんなもん、消えんじゃねぇかって、思ってたんだ」
思い過ごしだった、と言って俺は笑顔を見せた。
自分でも分かる。俺が見せているのは乾いた笑いだ……。
ビノは悲しそうに眉を寄せた。
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