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「相変わらず、でけーな…」
そう呟く俺前で門は軋んで開いていく。
その隙間から見える世界が、こちら側とは随分違うことを俺はよく知っている。
世界の基準、それは“血筋”だった。
血に力を持った者は高い地位につけた。それ以外は見下され、堕ちていく。それが世界の条理だった。
この、理不尽な理は、人の運命までをも決定づけていた。
俺が今立っている、壁のこちら側の都市を“ソース”と言った。
それはこの国の中心であり、一度世界が滅びる前は何かの宗教の聖地だったというここは、世界の中心とも呼ばれている。
だけどソースは一方で、人間の醜い部分の象徴でもあり……。
ソースはこの目の前にそびえる灰色の分厚い壁に囲われた閉鎖的空間。血に力を持った者でなければ、足を踏み入れることは出来ない場所だ。
力がないもの、又は混血の者は決して入ることは出来ない。
平等の二文字は、無機質な壁のどこにも感じ取れないだろう。
ガンッと一際大きい音がして、門が開ききった。
門の向こう側には、ごちゃごちゃとした町並みが見える。
「開いたぞー、シオン」
先程の番兵が、顔を出して叫んだ。
「それから、気を付けろよー!!カヴァ地区は最近荒れてるって言うからな!」
「おう!じゃ、おっちゃん!!」
俺は片手をあげると門に向かって走り出した。
そんな俺に向かって、番兵がまた叫ぶ。
「だからおっちゃんじゃねーっつってんの!!」
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