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「………」
パチパチパチパチ
と突然、乾いた拍手が聞こえてきた。
「おめでとさん。見事じゃねーか」
俺は勢い良く、視線を声のした方へ向ける。
少し先の方に、狭い路地に向かってごちゃごちゃと商品を広げている店があった。その店先の椅子に座る、タバコを吸っている短髪の男がにやりと笑って手を上げた。
「よぉ、シオン」
「……ビノ!」
俺は途端に嬉しくなって、倒れたままの少年達を飛び越えてビノと呼ばれた男に近づいた。
店の前まで来たとたん、ビノが口を開く。
「でもお前、まだ『ラインエイジ』名乗るには早ぇんじゃねーの」
久しぶり―――と言おうとしていた俺は、ムッとして言い返す。
「いーんだよ。もう試験は終わったんだし」
ビノは短くなったタバコを捨てると、驚いた顔で俺を見た。
「おっ、終わったのか」
「そーだよ。だからこうしてカヴァに来たんだろ」
俺はそういうと涙をぬぐうフリをする。
「……わざわざ荒れているという危険なスラムを通って!!」
「そーかぁ?俺にはそうは見えなかったけどな」
ウゼェ!!
「何を!」
「あそこで『タコ』とか言ってドンパチやってたのはどいつだよ」
「おにーちゃん!!」
と、その時店の奥から何かが飛び出し、俺の腰辺りに飛び付いた。
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