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「ごめんなさい。私、本当に何もできなくて」
湿った声。
それでも、すぐに顔を上げ、笑顔を作る。
「新しいのを買ってきます」
「お待ちなさい」
駆け出そうとする愛流を止めた。
その声に恐る恐る振り返る。
ぷしゅっとプルトップが音を立てた。
そのまま腰に手を当てた不動の構えで、中身を一気に飲み干す。
「ふぅ」
空っぽになった缶を口から離すと、小さく息をついた。
「あの、あの」
「気が変わってアイスティが飲みたいと思ったところでしたの。だから丁度良かったですわ」
状況に追いつけず、反応できない愛流からぷいっと視線を逸らし、
「さっきはちょっと言葉が過ぎましたわ。その、だから、なんというか、えっと、その」
もごもごと言葉を揺らす。
「素直に一言、ごめんなさいで済むのに」
ひかるが端的に代弁した。
「ひかる!」
「あはは。だから、愛流ちゃんも許してあげてね」
「はい。もちろんですよ。そもそも私が間違ったのが悪かったんですから。でも、玲菜さんって意外と優しい部分があるんですね」
「玲菜ちゃんは素直じゃないだけで、優しくて良い子なんだよ。すっごく意外かも知れないけどさ。ね、玲菜ちゃん」
「べ、別にわたくしは……」
と、そこで疑問符を浮かべた。
「気のせいか意外という部分を随分と強調された気がしますわ」
「そ、それは気のせいなんじゃないかな」
「そ、そうですよ。融通の利かないワガママお嬢様だなんて、私達思ってませんから」
「ちょっと、それはどういう意味ですの。大体ですわね……」
そこで言葉を止めた。
その目が大きく見開かれ、口がゆっくりと開いていく。
玲菜にしては珍しい表情。
効果音を付けるならポカーンだ。
「ん? どうしたの?」
異変に気付いたひかるが、玲菜の視線を追って振り返る。
そこで動きが止まった。
その幼さの残る瞳を丸くして、口を無意識に開ける。玲菜とまったく同じ、効果音的にはポカーンな顔。
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