第3章

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「どうしたんですか?」 残された愛流が二人の視線の先に目をやる。 「はうわぁ!」 小さな驚愕を言葉にして、目を輝かせた。 動いていた。 そう、お侍の銅像が、周囲をきょろきょろと見回しながら、台座からゆっくりと降りようとしていたのだ。 三人が慌てて校舎の陰に引っ込み、静かに様子を伺う。 台座から降りた銅像は、大きく伸びをすると、軽くストレッチを始めた。 「ずっと立ちっぱなしですから、辛いんでしょうかね」 変な具合に納得する愛流に半ば呆れつつも、じっと観察する。 軽く柔軟を済ませると、次はラジオ体操。 マニアックに第二の方だった。 数分間の運動で軽く体をほぐすと、いよいよ歩き出す。 辺りを警戒しているのか、身体を低く慎重な動きだ。 「さっきは普通にストレッチしてたのに」 お侍姿が腰を下げて歩くのは間抜けな絵面、いや、その顔に浮かぶ爽やかな笑顔を加算すれば不気味だ。 「あ、運動部棟の方に向かいますよ」 銅像は西校舎に向かっているようだ。 「やはり、アイツが犯人でしたのね」 「そうとは限らないけど怪しいよね。色んな意味で」 「後をつけて、現行犯で捕まえるわよ」 「うわわっ。すごいですね。私、銅像を捕まえるのは初めてなんですよ」 「そんな経験のある人はいないんじゃないかな、って愛流ちゃん!」 ひかるが小さく息を飲んだ。 「頭、頭、頭!」 「ほえ?」 両手で頭を押え、 「大丈夫、ちゃんと付いてますよ」 実にマイペースなリアクション。 「バカ言ってないで鏡を見なさい!」 玲菜がポケットから携帯ミラーを出して突きつける。 気圧されつつも覗き込んだ愛流が驚く。 頭頂部でぴょこんと跳ねた髪が赤と青に明滅していた。 「はうわぁ! レーダーに反応してるじゃないですか! あの銅像さんは、タイムトラベラーですよ!」 「でも、今までは反応なかったのに」 「きっと台座に仕掛けがあるんですよ」 「ややこしい話になってきましたわね。それはともかく、自分で解らないレーダーは意味ないんじゃありません?」 「レーダーは付いているのに意味があるんですよ。機能とかは二の次ですから」 「それはダメなんじゃないかな」  
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