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「データバンクに登録されていませんね。間違いなく、非合法トラベラーです」
携帯電話をぽちぽちと押しながら、愛流が断言した。
彼女の持つ携帯電話は未来の超小型ハイスペック端末なのだ。
様々な機能が隠されているらしいが、マニュアルを忘れてきた彼女ができるのはデータの照合とメールに電話くらいである。
銅像が西校舎の裏に消えて行くのを確認して、三人は顔を付き合わせた。
ここから作戦タイム。
「相手がタイムトラベラーとなると、一筋縄ではいきませんわね」
「それにしても何で銅像なんかに」
「現地に溶け込むのに、人間よりも銅像の方が適していると思ったんですよ。これはなかなか狡猾な相手です。油断はできませんよ」
「狡猾、かなあ」
「とりあえず捕縛の準備を整えておかないといけませんね。別の時間に移動されると面倒ですし。どこか適度に開けた場所があるといいのですけど」
「それなら、校舎の屋上を使えばよろしいですわ」
「でも、屋上って立入禁止じゃないですか。施錠されてるし」
「ふふん。こんなこともあろうかと、父様に頼んで合鍵を用意してもらっておきましたの」
そう言って、ポケットから鍵の束を取り出した。
お嬢様の力は未来の高性能端末より、余程役に立つ。
「問題はどうやって屋上まで誘い出すか、ですけど」
「ボクがやるよ」
ひかるが小さく挙手。
「まず平和的に声を掛けてみるけど、もし追いかけられても、ボクなら足が速いしね」
「そんなのいけませんわ。ここは本職の愛流が囮になるべきです」
「え! 私がですか! あ、いえ、そうですよね。私が捜査官ですもんね」
「普段はおっとり役立たずでも、いざ本気になれば、リミッターを解除して超人的能力を発揮するのでしょう?」
「そんな無茶言わないでくださいよ。このボディのスペックは、普通の人間と変わらないんですから」
「でも、愛流ちゃんでないと準備ができなんじゃない?」
「あ、そうですね。どうしましょう」
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