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糸口が掴めないまま、数分が経過した。
「あの、あなた、未来人ですよね」
びくん。
さっきの倍は肩が跳ねた。
「しかも非合法トラベラーですよね」
びくん。
更に二倍。器用な銅像だ。
「あの、どう言えばいいのか解らないんですけど」
「時間安定管理室の捜査官か?」
安っぽい合成音で尋ねてきた。
「まあ、その協力者みたいな感じです。あのですね」
「やはり追ってきたか。そう! 察しの通り、我こそが時空を股に駆ける大盗賊! その名も!」
「ちょっと待ってください」
ナイスタイミングで割り込んでしまった。
微妙な沈黙になってしまう。
お侍様が凄い非難のこもった目で睨んでいる気がする。
もっとも表情は相変わらずの笑顔だが。
「あの、ごめんなさい。続けてください」
「まったく、近頃のガキは礼節をわきまえておらんな」
ピッキングで侵入する銅像が、礼節について語れるのだろうか。
「時空を駆ける大盗賊! グールンベルト十三世とは我のことだ!」
ぐっと胸を張って、力強く言い放った。
「あのね、グールンベルトさん、非合法なタイムトラベルは……」
「ちょっと待てぇいぃぃ!」
「今度は何ですか?」
「ちょっとはリアクションしろよ! このままだと我がバカみたいじゃないか!」
「そんなこと言われても」
「まあいい。丁度、確認したいことがあったのだ。この学校には巨大な宝石が隠されていると聞いたのだが。どこにあるか解るかね?」
「はあ、宝石ですか」
少なくとも運動部の部室なんかにはないだろう。
「どうやら知らぬようだな。それなら良い。我も忙しい身でな、では失礼」
「ダメですよ。非合法なタイムトラベルは禁止されているんでしょう」
横をすり抜けて去ろうとする銅像の前に、ひかるが両手を広げて立ちはだかる。
「くっ、誤魔化しきれなかったか。えぇい、油断のならぬ奴」
「見つかってしまったんですから、ここは大人しくですね」
「よし、これで手を打たぬか」
銅像が銀色のコインを見せた。
日本政府発行の五百円硬貨だ。
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