第2章

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私立白桃学院はクラブ活動が非常に盛んだ。 大小合わせて五十近いクラブがあり、放課後になると殆どのクラブが活動を始める。   各クラブの部室は、東西の校舎裏に立てられた五階建ての部室棟にある。 西側が運動部。東が文化部だ。   文化部棟の三階。 突き当たりにあるのが、幻想文学研究会。通称、メルヘン部。 表向きには児童文学や幻想小説の研究を活動内容としているが、実際にはお菓子を片手に喋る雑談部である。   狭い部室には名目通り、カラフルな背表紙の並んだ本棚が二つと、簡易な会議机にパイプ椅子が三脚。   主力? の三年生が卒業して以来、二年生が三人という寂しい状況なのだ。 ちなみに現在、椅子についているのは二人である。   「今度はソフトボール部に出たの?」   曽根川ひかるが声を上げた。 目を丸くして、驚きをストレートに表現する。   「そうなんです。今朝、部室に入ると、中が綺麗に掃除されていたらしいですよ」   天見愛流が緊張感のない、おっとりとした口調で説明した。   愛流は目尻の下がった大きな瞳の愛らしい子だ。 独創的なファッションセンスを持つ彼女の今日の服装は、紺色のショートのワンピースにソフトブーツ。 どちらにも白い十字マークが走っている。 肩には羽根を模ったアクセサリー。   「これで三件目だね」   ここ数日、白桃学院では奇妙な出来事が起こっていた。 部室が綺麗に掃除されるという怪事件だ。 それも生徒達のいない夜間に。   もちろん、各部室は施錠が原則。 つまり、何者かが鍵をこじ開け侵入。 室内を綺麗に片付けて外に出る。 しかも、再び鍵を掛けて。   盗難等の被害がないせいか、小人さんが片付けているだの、どこぞの鳥が機織りのついでに掃除をしているだのという、信憑性の欠片もない噂が流れ始めていた。   「やっぱり変質者の仕業なのかな」 「確かに異常性がありますよね」   愛流が鞄からお菓子を引っ張り出しながら、相槌を打つ。 ちなみに、今日のお菓子は愛流のお気に入り。 楕円形の奇怪な鳥がプリントされた、手の平サイズの箱に入ったチョコレートスナック。   「昨日が軟式野球部で、その前は公式野球部だったよね。で、今回がソフトボール。これらに共通する点は……」 「あ!」  
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