第2章

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「なに? なにか思い当たることあった?」 「金のエンゼルが出ました!」 「……あはは、おめでと」   話の腰をぽっきりと折られたが、ともかく祝辞を述べる。   「ありがとうございます! 天使をイメージした服にしたかいがありましたよ!」   肩の羽根をパタパタと動かして微笑む。 どういうギミックになっているのだろう。   「この幸運をくれた神様にもお礼を言っておかないと」   入り口のドアの対面に付けられている窓ガラスをからりと開き、大きく息を吸った。 「神様ぁ、ありがとうございます!」   と、それから親指をぐっと立てて、 「ぐっじょぶ!」 と付け加える。   神様相手に随分とフランク過ぎる感じもするが、きっと彼女の中では神様もサムズアップしてナイスガイな笑みを返しているのだろう。   「はい、終了っと」   感謝のセレモニーを済ませると、窓を閉めて席に戻る。 季節は晩秋、冬の香りが多分に含まれた風は優しくないのだ。   「えっと、何の話でしたっけ」 「例の部室侵入事件の話だよ。ボクが思うに……」 「お待たせですわ! 上之宮玲菜! 満を持しての登場です!」   ばんっと力一杯開けられたドアから、少女が入ってきた。  上之宮玲菜は、メルヘン部の現部長である。 ボリュームのある長い髪と整った目鼻立ちには、どことなく高貴な雰囲気が漂っている。   いきなりの登場に驚く二人の前で、くるりと華麗にターン。ぴっと胸を張った独特のポーズで止まった。 彼女の持つ空気は、高貴ではなく好奇かもしれない。   「今日は掃除当番ですっかり遅くなってしまいましたわ。まったく、このわたくしに掃除させるなんて、今の教育は間違っていますわね」   これまでの教育が明らかに間違っているのが解るコメントをしつつ、開いているパイプ椅子に腰を下ろした。   「ところで、あの話、聞きました?」 と、唐突に切り出す。   玲菜は日本でも有数の大企業、上之宮グループの一人娘である。 その肩書きに恥じぬくらい、蝶よ花よと育てられたせいか、非常にマイペースで周囲に左右されない個性を持つ人間に成長してしまった。  
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