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「ソフトボール部の話だよね」
「今、ひかるさんとその話題で盛り上がっていたんですよ。何か共通する……」
「そんなのどうでもいいですわ。ただの変質者の仕業でしょ」
容赦なくばっさり。爽快だ。
「それよりも、興味深い話がありましてよ。昨晩、守衛が見たという噂ですわ」
そこでもったいぶって、間を取った。
案の定、続きを気にして二人が食いついてくる。
「見たって、なにを?」
「あ、解りました。ひょっとしてアレですね。アレなことですね。でも、校内でそんな。いや、でもそういシチュエーションが逆に。もう! なんていうか青春?」
真っ赤に上気した頬を両手で押さえながら、くねんくねんと身体を揺らす愛流。
「なんですの。いきなり」
「青春ですね。いいなぁ。若いな、良い眼をしている。っていうか、そんなに見つめ合って、いやらしい。家には旦那と子供が居るんですよ的な展開に?」
愛流は夢見る乙女。
卓越した想像力は、世界の壁を突き破り、いつでも意識を旅立たせる事ができるのだ。
「いや、そんないきなり! 会ったばかりなのに! 良いではないか、良いではないか。あれぇぇ、お代官様ぁ。いやいや、そちも悪よのぉ」
「はい、そこまで、ストップだよ」
かなり遠くまで跳んだ意識を、ひかるが「そこはまだ仏陀の手の上だ」と言わんばかりに現実に引き戻した。
「はっ、つい考え過ぎてしまいました」
「相変わらず呆れるほどの妄想力ですわね」
「いやん。褒めても何もでませんよ」
「褒めてなどいません! と言うより、ヨダレが出てるので拭きなさい」
「で、何を見たって?」
「例の動く銅像ですわ」
部室の件以外にもう一つ、噂になっているのが夜に動く銅像である。
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