第2章

4/5
前へ
/33ページ
次へ
「ソフトボール部の話だよね」 「今、ひかるさんとその話題で盛り上がっていたんですよ。何か共通する……」 「そんなのどうでもいいですわ。ただの変質者の仕業でしょ」 容赦なくばっさり。爽快だ。   「それよりも、興味深い話がありましてよ。昨晩、守衛が見たという噂ですわ」   そこでもったいぶって、間を取った。 案の定、続きを気にして二人が食いついてくる。   「見たって、なにを?」 「あ、解りました。ひょっとしてアレですね。アレなことですね。でも、校内でそんな。いや、でもそういシチュエーションが逆に。もう! なんていうか青春?」   真っ赤に上気した頬を両手で押さえながら、くねんくねんと身体を揺らす愛流。   「なんですの。いきなり」 「青春ですね。いいなぁ。若いな、良い眼をしている。っていうか、そんなに見つめ合って、いやらしい。家には旦那と子供が居るんですよ的な展開に?」   愛流は夢見る乙女。 卓越した想像力は、世界の壁を突き破り、いつでも意識を旅立たせる事ができるのだ。   「いや、そんないきなり! 会ったばかりなのに! 良いではないか、良いではないか。あれぇぇ、お代官様ぁ。いやいや、そちも悪よのぉ」 「はい、そこまで、ストップだよ」   かなり遠くまで跳んだ意識を、ひかるが「そこはまだ仏陀の手の上だ」と言わんばかりに現実に引き戻した。   「はっ、つい考え過ぎてしまいました」 「相変わらず呆れるほどの妄想力ですわね」 「いやん。褒めても何もでませんよ」 「褒めてなどいません! と言うより、ヨダレが出てるので拭きなさい」 「で、何を見たって?」 「例の動く銅像ですわ」   部室の件以外にもう一つ、噂になっているのが夜に動く銅像である。  
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加