3・魔法(自由行動)

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「この家に住んでたとき、私はまだ小さい子供だったんだけど、いろんなヤマケと話してた。 友達だったっていうか、友達より親しかった」 「それは…」 少し気持ち悪いかも。 「中でもすごく私に優しくしてくれるヤマケがいて、 ……私はそれを『おかあさん』って呼んでた。本当の母親は、もう死んでたし」 「そ、そう……」 ひかるは何も言えない。 「『おかあさん』はいろんなことを教えてくれたわ。今朝投げた葉っぱの袋の作り方とか」 「……」 「それで、引越しでこの家を出るとき、『おかあさん』は私に魔法をかけたの」 「魔法?」 「うん。『愛流がみんなに好かれるように』って。『ヤマケにも人間にも、出会ったものすべてに可愛がられますように』ってさ」 「へえ…」 「なんかそれって面倒くさい。だって誰にでも好かれる人なんていないでしょ? 上之宮会長みたく、ハッキリ嫌われてるほうが判りやすくて楽だわ」 どーん… 「だってさ、どうしても判らないよね? 誰かが私に親切にしてくれたとして、 それが本当の気持ちなのか『おかあさん』の魔法なのかってことは、さ」 どーん! 「だから私、」 どーん!! 「真面目に話してるんだから壁を蹴るのやめてよ! 穴あくでしょ」 「僕じゃないよ!」 どどーん!!! 突入!あさま山荘事件。 ひかるの脳裏をそんな言葉がよぎったが何の役にも立たない。 二人のいる部屋の壁が、 クレーンに吊られた鉄球によって崩れ去った。 「天見愛流! 大人しく出てきなさいな♪」 上之宮玲菜が校舎の窓からメガホン片手に身を乗り出している。 【覚書】 裏山探索部と生徒会との争いの根は深い。 ……修復はおそらく不可能。
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