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冬、山間地帯の黄昏時の寂しいことと言ったらない。
お昼を回ったなーと思っているうちに辺りがたそがれてしまうのだ。これ本当。
で、今がまさしくそんな時間だった。
しかも、人気がない。
今この学園にいる人間は三人だけ。
その上この『壁』が生えてきたもんだから、
山城学園屋上は寂しいとか通りすぎてちょっと不気味な風景になっていた。
「ダムの底みたいね」
愛流がつぶやいた。
言われてみればそうかも、とひかるは四方を囲む高い壁を見上げた。
ダムと違うのは壁の材質だ。なんだか、つるつるして白い。
「何をなさってますの?
あたくしはいつでもオッケーですわ! 早く決着をつけましょう♪ 天見愛流!!」
四角い屋上スペースの向こう端で玲菜が呼ばわる。
愛流は振り向いた。
「それだけは同感よっ!」
………
こうなったら一対一のガチンコ勝負で決着をつけてください。
人質を取るとかアジト襲撃とか
そんなん応酬しても何の解決にもならないことぐらいニュース見てて判りませんか?
僕が審判として立会います。学校にも話をつけましょう。
負けた人は勝った人の言うことをきく。と。よござんすね?
愛流の親戚名義だった土地と家屋を光速で買い取って一部鉄球で砕いた玲菜
(地位と財産を甘く見ましたわね♪)に、
ひかるがいちかばちかで申し出たところ
「公式に虫女を叩きのめせるなら好都合ですわ♪」
とばかりにあっさり承諾された。
「……負ける気がしないわねっ」
愛流も乗り気であった。
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