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「ハァッ!」
身体能力は愛流が勝っているようだ。
一撃で終わらせようとしたのだろう、気合いのこもった一閃が玲菜の肩口めがけて振り下ろされた。
ぎいん
しかし玲菜はこれを鎖で跳ね返した。
軽々と無駄のない動きだ。身体の脆さを考え抜かれた動きで補っている様子である。
「ハッ!」
愛流は続けざまに打ち込む、打ち込む、打ち込む。
ぎんっ
ぎいんっ
ぎん!
玲菜は跳ね返し、跳ね返し、また跳ね返す。
「ただ打ってくるしか能がありませんのね♪ さすが山猿さんですわ」
「受けるしか能のない人に言われたくないわねっ」
「本当にそうお思い?」
がしゃんっ
出た! 鎖鎌のお約束、分銅を投げつけて相手の獲物を絡めとる手だ。
玲菜の放った鎖が、木刀の柄のすぐ上に蛇のごとく巻きついている。
「わぁおっ」
愛流は木刀を押さえられたのにも関わらず
(オラなんだかワクワクしてきたぞ)とでも言いたげな表情になった。
「こうと来たらっ……」
ぐぐっ!
大物が当たった釣り人のように木刀の柄を引く。
負けじと踏ん張る玲菜。
「こうでしょっ!」
ぶんっ
引いていた木刀を不意打ちに相手目掛けて投げつける。
「……っ!」
玲菜はたまらずたたらを踏む。
しかしその目には勝利を確信する輝きがあった。
(自ら武器を投げ打つなんて、終わったわね♪)
「どうかなっ?」
たん!
一瞬だった。
木刀を投げたと同時に愛流も飛んでいたのだ。
手をついて宙返りし、
「かかと落としっ!!」
振り下ろされた片足が、
玲菜の右腕を直撃。
「きゃぁっ」
玲菜は尻餅をついて、鎖鎌を取り落とした……。
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