5・宇宙(野外探索)

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ぶぅぅぅぅん… ぶぅぅぅぅん… 上空に現れたそいつは、もう『虫』とも呼べない代物だった。 「あああぁぁぁ! イヤぁぁ!!!」 玲菜でなくとも絶叫したくなる。 ぶぅぅぅぅん… 山いっぱいに響き渡る羽音。 その源は、空いっぱいに身体を伸ばしたムカデのような姿をしていた。 絶え間なく無数の足をうごめかせ、 羽根を震わせている。 (上之宮玲菜……殺す!) ムカデに似た何かは 真っ暗な口を開けながら玲菜に飛びかかると、 ばくん。 「会長っ!」 あっけなくこれを飲み込んでしまった。 「会長っ! 上之宮会長ーっ!」 目の前にいた相手が、消えた。 愛流は我を忘れて叫ぶ。 「落ち着いて、天見さん」 「落ち着けないっ! 私、私のせいだっ」 愛流は目に大粒の涙を浮かべてひかるを振り返った。 「あれが『おかあさん』よ。私のために会長を殺すって言った! 私のせいだよ……」 ふらふらと立ち上がる。 「待つんだ」 「だめ! あれは私が呼んでしまったの。 私が行けば、全部終わるわ」 愛流は電光石火、 ひかるの頬に軽く口付けると 「サヨナラ」 玲菜の後を追うように、 『おかあさん』の口内へと飛び込んでいった。ぶぅぅぅぅん…… 後にはひかると、 空中を漂う化け物の姿があるのみだった。
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