承 ―魔法―

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 一階、玄関から見て左側の奥にあるおじい様の部屋へ二人で行き、魔法という言葉を伏せておきながら事情を話す。おじい様は二つ返事でひかるがうちの学校へ通うことを了承してくれた。   「へーあの子来るの! やった。いっぱいお話したいなぁ」  二年三組……いつもの私たちの教室。一番後ろ、窓際から二番目の私の席で、私と愛流はひかるのことについて話していた。  何もなかった私の席の左側……一番後ろ窓際には、新たに一組の椅子と机が置かれている。あと一週間で夏休みと言う微妙な時期の転入生のためのものだ。 「はい皆席に着いてー」  若い女の人……私のクラスの担任の先生が大きな声で生徒に席に着くように言う。愛流は私の席から離れ前のほうにある自分の席へと戻っていった。 「今日は新しいクラスメイトが来ています」  先生が言うと「こんな時期に?」とか「男の子ですか? 女の子ですか?」とか、ありがちだけれど、日常に訪れる些細な非日常に興奮気味の生徒たちが質問する。それらを無視、と言うより呼んだ方が早いと思ったのか、早速廊下にいるだろうひかるに声を掛ける。 「じゃあ、入ってきてー」  先生の声を聞くと、ガラガラと控えめにゆっくりと引き戸があけられる。そこから、黒髪のショートヘアが似合う、童顔の少女が入ってくる。少女は教卓の所まで着くと、おろおろと先生のほうへ視線を向ける。 「それじゃあ自己紹介お願いします」  そう言われると、少女……ひかるは恥ずかしそうに顔を伏せながら、 「そ、曽根川ひかるです。……こ、これから宜しくお願いします」  とだけ言った。 「じゃあ、曽根川さんは……一番後ろの窓際……上之宮さんの隣に座ってください」  私がいることを確認すると、ひかるはちょっとだけ安心したようで、笑顔を取り戻す。 「良かったです、玲菜ちゃんの隣で……」 「まあ、転校生って大変そうでしょうね……」  ホームルームが終わると、私の予想通り、男女問わずクラス中の生徒たちがひかるのもとに集まる。 「趣味は?」「どんな人がタイプ?」「可愛いね!」「俺と付き合ってくれ!」……などなど。質問攻めに困惑しているひかるを私がかばうようにする。
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