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「へえ、じゃあ、ひかるちゃんは、本当はひかる君なんだね」
「はい……」
「んー、見えないなぁ」
「一応は、今はれっきとした女の子みたいですからね……」
「そうじゃなくて。仕草とか、普通に女の子っぽいなぁって」
「ふぇ……!?」
深刻な話だというのに、愛流はあっさりと話に花を咲かせてしまう。
「わかった! あたしも協力するよ! 親の敵討ちと、本当の自分を取り戻すために!」
「……玲菜ちゃんにももう一度聞きます。ぼくに、協力してくれますか?」
「勿論よ。できる範囲ならね」
少なくとも衣食住は今だって提供しているし、お父様のお怒りに触れないくらいの事ならばするつもりだ。
「分かりました。それじゃあ」
そう言うと、私の部屋の片隅にたてかけてあった杖を持ち、私の前に差し出す。
「これからぼくがすること……手伝ってもらうことは、きっととっても危険なことです。ですから、せめて……」
一息ついて、続ける。
「自分の身を守る力は、持っていて欲しいんです」
初めて、ひかるに対する三人称を「彼」にしようと思った。大げさな台詞を言ったその表情は至極真剣で、一抹の恐怖心さえ感じた。
そう、このときの私は、このあと私たちに立ちふさがる、凶悪で倒しづらい敵のことなんて何一つ知らなかったのだ。
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