21人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
日付は変わり、火曜日の朝。
「なんで、愛流……ねえ、なんで?」
「い、いやぁ、そんなに言われてもなぁ……」
昨日の夜。私と愛流はひかるに魔法について教えてもらった。魔法が使えない人でも……媒介があればある程度は使える人もいるらしい。その媒介というのがひかるの持っていたあの杖であるらしく、ひかるはそれを使ってやってみるよう私と愛流に言った。私は、杖を持ち、
「水なり炎なり、何でもいいから、水晶から何か出てくると想像してみてください」
というひかるの言の通り、水晶から何かを放つイメージをしてみた。水、炎、電気、光、冷気、……どれも想像してみたが、何も起こらなかった。
「はあ、だめ、何も起こんないわ」
「最初はそんなものです」
その台詞に、あきらめて杖を愛流に渡した。
「はわわ、なんかすごいの出たー!」
渡して一分もせずに、愛流は杖の水晶部分の周りに青白い光の線を纏わせた。
「……すごいです! 属性は、電気ですね」
「愛流……杖、貸しなさいよ」
「はい。……何か起こってる?」
「べ、別にっ……!」
愛流が帰ったあと、私は杖を借りて必死にやってみたが、一晩たっても何も起きなかった。
「もともと、媒介があっても使えない人のほうが多いんです。寧ろ、玲菜ちゃんのほうが普通なんですよ」
そうは言われても、どんなに頑張ってもできないことを、いともたやすくやられてしまうと、悔しいものがある。朝のホームルームで先生が来るまでは、愛流をジト目で見ていた。
この時まで、本当に、この時までが、平和な時間だった。
最初のコメントを投稿しよう!