op ―日常―

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「さて、今日は何をしよう?」  このショッピングモールに来るときは、明確な目的を持っていないことが多い。大体いつもウィンドウショッピングをして、お昼を食べて、またウィンドウショッピング、後は愛流が行きたいと言えば、二階の西端にあるゲームセンターでUFOキャッチャーをするくらいだ。 「うーん、まずはお洋服が見たいな」  私と愛流でもっとも趣味が食い違うものだ。お洋服屋さんは一階に点在しているが、私と愛流が別行動するとしたら、まず間違いなく逆方向に進むだろう。愛流は東よりにあるファンシーなお店が好きで、私は、西よりにある白と黒を基調としたシックめのお店が好きだから。こうやって一緒に来るときは、愛流の好きなほうを優先させちゃうんだけど……。 「うわー、この服可愛いなぁー、あ、こっちも良いかも!」  例によって、今日もまた愛流の好きなお店に先に来ている。カラフルな店内は、やはり私の趣味とは若干逸れているが、愛流が眺めている服の趣味は理解できないほどではなかった。色々と見ていた愛流は、最終的に袖のないワンピースを選び、試着室へ持っていった。 「どぉー? 似合ってるかなぁ?」  数分もすると愛流は試着室から出てきた。正直に言うと、可愛いと思えた。愛流にしては、無難なチョイスだと思う。 「良いんじゃない? 少なくとも、変ではないと思うな」 「おおー、珍しいなぁ。服のことで玲菜があたしのこと褒めてくれるなんて」 「べ、別に褒めてるわけじゃ……」  言いかけてやめる。意地になって否定するのは私の悪い癖だ。 「……うーん、ツンデレだねぇ、玲菜ちゃんは」 「なによ、その『つんでれ』って」 「んーん、何でもなーい」  結局、愛流は試着した赤いワンピースを購入してお店を出た。
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