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駆け寄って、倒れている人の体を揺する。
「大丈夫ですかぁ?」
と愛流が声をかけていたが、倒れている人(というよりまだ私たちと同じかそれより下くらいの子)は返事をしなかった。
幼い顔立ちと、男の子にしては長め(ベリーショートとショートの間くらい)の髪型では、性別が判断しづらかったが、白いTシャツや黒い半ズボン、首に掛かったヘッドホンなどから、男の子っぽい格好だと思った。
右手には、頭のところに青い水晶のような球体がついている杖を持っている。愛流が好みそうなアイテムだけれど、今はそれどころではない。
しばらく揺すっていると、その子は目を覚ました。
「……ッ!?」
覚醒するなり、その子は右手に持っていた杖の、球体の部分を私たちに向けたが、
「あの、大丈夫……?」
と声を掛けると、その子は私たちに向けていたそれをおろした。
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません……」
そう言うと、その子は立ち上がろうとするが、足元がおぼつかず、また倒れてしまった。
「仕方ないわね……愛流、手伝って」
「うん」
携帯で事情を話し車を呼ぶ。そのあと、二人がかりで少年(結局男の子なのかどうかは分からないけど)を運びだす。エレベーターを使ったがなかなか大変だ。
なんとか南口までたどり着き、数分待っていると、黒塗りの車が目の前に現れた。中からは、黒いスーツを着こなした若い男の人……西峰さんが現れ、私たちに向かって一礼する。
「お待たせしてしまったようで申し訳ございません、お嬢様」
「それはいいから、早くこの子を」
「承知いたしました」
西峰さんは、まず後ろの座席のドアを開け、私たち二人で抱えていた男の子(?)を、お姫様抱っこの形で抱えると、後部座席に寝かせるようにそっと乗せた。
「毎度思うけど、上之宮家って、結構なお金もちだよねぇ。うちの学校も確か玲菜のところなんだよね」
上之宮家……私の家のことだが、今はそんなことを関心ごとにするべきではない。愛流も空気を読んだのか、それ以降は黙っていた。
「あたし、ついていかなくて大丈夫?」
「うん、大丈夫だと思うわ。じゃあ、こんな形になっちゃったけどまた明日ね」
車の助手席から、手を振る。向こうも両手をぶんぶん振っているのが見えた。
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