起 ―異変―

3/6
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
「……んん」 「あら、目が覚めたかしら」  いつも私が使っている天蓋付きベッドには、ピンク色のネグリジェを着た女の子が先客として使っている。その女の子が、まさに今、目を覚ましたようである。 「あれ……ぼく……」  女の子は目が覚めると辺りをきょろきょろと見回した。無理もない、私の部屋に連れてきたのだから。  男の子(?)を私の家まで送り届け、私付きのメイドである蛍子さんに、その子の着替えをさせるように頼んだ。蛍子さんによると、男の子っぽい服装だったが、れっきとした女の子だったらしく、それならばと私の部屋まで彼女を運んできてもらった。客間を使うこともできたが、あんまり使いすぎるとお父様に叱られかねない。今日は大切な取引先の方々が来ているって言うし。  女の子は、私に気づくと、「あっ」と声を上げてベッドの上で上半身を起こした。 「あの、度々すいませんでした」 「別に構わないわ。それよりあなた、お名前は?」 「……曽根川ひかるです。えっと、お味噌の噌のくちがないのと、根っこの根とさんずいじゃない簡単なほうの川で、ひかるはひらがなです」 「ひかる、ね。私は上之宮玲菜」  机においてある紙とシャープペンを使って、私の名前を書く。 「……上之宮さん」 「玲菜でいいわ。さん付けもなしね。……取り敢えず、今日は遅いからここに泊まっていくといいわ。女の子同士だし、問題はないでしょ?」 「……えっ?」  キョトンとした顔でこちらを見つめるひかる。 「それとも、一人で帰れるかしら? 車くらいなら出してあげられるでしょうけど」 「え、えっと、あの」  ひかるは、おどおどとした様子でこちらを見ていたが、しばらくすると落ち着いて、 「何でぼくは、こんな格好なんでしょう?」  と聞いてきた。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!