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「ああ、ごめんなさいね、私のお下がりなの。あなたが着ていた服は、洗濯させてるから待ってて頂戴。あ、ヘッドフォンと杖はそこね。」
ベッドの枕元を指差す。
「あ、ありがとうございます。……で、でもこの格好、いくらぼくが女の子っぽくても、ちょっと恥ずかしい気が……」
「? あれ、あなた男の子なの?」
「ええ、一お……ん?」
ひかるの言葉が途中で止まったかと思うと、ベッドの上でもぞもぞとし始めた。ひかるの表情が驚くようなものに変わっていたが、その後うつむいてしまった。
「大丈夫? 気分悪い?」
「えっと……ぼく……女の子みたいです」
「えーっと、どうしようかしら……。合う服なんてきっとないわよ?」
「あの、いや、そうじゃなくて……ぼく、男だったんですけど、今なんか、女の子の体になってるみたいで……」
何を言っているのかしらこの子、不思議系の発言なら愛流だけで勘弁してほしいわ……そう思っていたがどうやら事態は深刻らしく、
「どうしよう、なんで?」
と焦っているようだった。
「取り敢えず、お家の連絡先は分かる?」
「…………」
黙ったままだった。さっきからの挙動をうかがえば、家出をした子だと思えなくもない。正直に言えば、関りたくなさそうな面倒ごとに関ってしまうと思った。
「じゃあせめて、デパートに行くまでの経緯を教えてくれる?」
「分かりました。その、現実味はないって分かってますけど……」
ベッドから降りてひかるは語り始めた。
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