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475円の釣り銭を渡す時、スーツの男が口を開いた。
「お前、名前なんてんだ?」
…お前?
腹の奥底で不快感が踊る。
この男は殆ど初対面の俺に対し何と無礼な振る舞いをするのだ。
俺は怒りの余り俯き、メガネをくいと上げて答えた。
「さ、ささ、坂本です」
しまった。
どもった。
「ふーん」
男はさほど気にした様子もなく、レジ袋に入った商品を受け取り、その場を去った。
なんやあの男…。
自分から名前聞いておいてそのリアクションかよ…。
「お前、目ぇ死んどるな」
振り向くと、去ったはずの男が自動ドアの前に立っていた。
「お前の両目は一体何が見えとるんや?」
そう言い残し、今度こそ男は立ち去った。
…薄笑いを浮かべながら。
ああああああ苛々する!
畜生!畜生!畜生!
なんなんだあの馬鹿にした目は!
…してやりたい。
殺して…やりたい…!
「ちょっとー。レジ待ってんだけどー」
ハッと我に返り前を見ると、見るからに頭の悪そうな女が立っていた。
…犯すぞこのアマ…
危険な激情を抱えながら、
「も、もも、申し訳ありません」
と言い俺は、また無表情でレジを打ちだした。
銀杏青心小僧
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