14人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
スーツの男は瞬時にこの場の状況を把握した様子だった。
顔には笑みさえ浮かべ余裕の表情だった。
そして僕は…
どうしても膝の震えが止まらずに全く動く事すら出来なかったんだ…
犯人はスーツの男に怒鳴り散らした。
余裕面がよっぽど気に障ったのだろう。
「こらぁお前もこっちこんかい!」
「えっ僕ですか?」
スーツの男は「はい」と弱々しい返事をして犯人に歩み寄った。
その時!一瞬の出来事だった。
スーツの男は犯人の持ってるナイフだけ蹴り上げたのだった。
その後は簡単だった。
いや簡単に見えただけかもしれないが、犯人を完璧に押さえつけていた。
僕も震える膝をごまかしながら応戦した。
自分がなんの役にも、たってないのは誰の目にも明らかだった。
数分後警察が来て犯人は抵抗さえ見せず、パトカーへ乗り込んで行った。
よく考えてみたら店内で防犯ベルを鳴らした形跡もない。
きっとスーツの男が店内に入る前に警察へ連絡していたに違いなかった。
完璧過ぎる…
僕は何故、目が死んでると言われたのかがわかった気がした。
僕の中の宇宙が崩れ去る衝撃。
これだ!
僕は無我夢中でスーツの男を追い掛けた。
奥州幸村
最初のコメントを投稿しよう!