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愛流はぶすっとした表情で弁当箱と突っついていた。愛流が不機嫌なのは転入生が原因だった。途切れることなき転入生の机の周りを見るたびに愛流はいらだつ。
「学級委員長って、なんのためにあるんだろうね」
「転入生に近づけないのがそんなにいらいらするんだ。……恋?」
愛流は隣に座っている彩をにらみつけたが、彩の表情はニヤニヤしたままだ。
「そうじゃないよ! このままじゃ、私が学級委員長で在る威厳が崩壊しているって言うの!」
「あー、はいはい。転入初日にしてあっさりとクラスになじんでいる曽根川ひかるくんが気になるのねぇ」
愛流はむすっとしたまま弁当を口に中にかきこんだ。
「とはいえ、今は委員長としてがんばる絶好のチャンスなんじゃない?」
彩の言葉に愛流は首をかしげる。
「こんな時間なのに人は耐えないしね」
昼休みが始まってからすでに二十分が経とうとしている。その間ずっと転入生の机の周りは生徒が群がっているのだ。
「いい加減、おなかすくよねぇ」
愛流は立ち上がると、口に含んだものを一気に飲み込んだ。
「それじゃ、行ってくるよ!」
ご飯粒を飛ばしながら、愛流は宣言し、さっそうと歩き出した。
愛流は手を叩きながら人の中に分け入っていく。
「はーい、お昼の時間をだいぶ過ぎていますよー」
ダンッ。
力強く、愛流は机を叩いた。
「曽根川くんはお昼を食べた?」
周りにいた生徒は互いに顔を見合わせると、あきらめた表情で散っていく。取り残されるような形になったひかるは、
「え、えと。まだ、だけど……」
しどろもどろに答えた。
「それじゃ、購買部を教えてあげるよ!」
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