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愛流はひかるの手をつかむと走り出した。
「やっぱり、この時間じゃないしたものがないね」
購買部にはあんぱんやメロンパンなど、明らかに売れ残りのものしか置いてない。
「この時間じゃあっただけでもいいと思う」
ひかるはそう言うものの、もっと早くに気がつくべきだったのだろうと愛流は思った。
なんて言ったって、学級委員長なのだからだ、というのが理由だ。
「はい」
不意に差し出された缶ジュースに愛流ははっとする。
「お礼。実はあの人の多さにはちょっと困っていて。助かったよ」
微笑むひかるの顔を見た愛流はすぐに顔を背けた。
「べ、別に委員長だからやったことで……ま、また何かあったら助けるから!」
愛流は差し出された缶ジュースをひったくると、すぐさま駆け出した。
愛流はこれまでにないほど午後の授業に集中した。と、いうのも気を抜いたらなぜか笑顔の転校生が頭に浮かんでくるからだ。そのたびになぜか顔が熱くなる。それを防ぐために必死に授業を聞いていた。
とはいえ、さすがになれないことをしていたためか、よほど体にこたえたようだ。
「ちょっと、起きないか」
「はひ?」
愛流が目を覚ますと目の前には人がずらりと並んでいる。
自分の横も同じように人が並び、左側にはホワイトボートの前に立っているメガネをかけた男子生徒が愛流に向かってにらみを聞かせていた。
「大事な会議中に寝ているなんてどうかしている」
愛流はしばらく思考をめぐらせ、今、学級委員長会議の真っ最中だということに気がついた。
「月に一度の会議を寝るとは、よほど何事もなかったようだな」
この会議はその月にクラスで起こった出来事を連絡し、どのように対処するかを検討する。
生徒のことは生徒で。
という生徒の自主性を尊重するための会議なのだ。
「お前のクラスは転入生が入ってきたばかりなのだから、いろいろと問題が多いとは思うのだが?」
男子生徒のメガネを奥の瞳が鋭く光っている。愛流は震え上がった。
「そ、それがですね、もう、うまくいっていて、すでに転入生はクラスになじんでる~、というか、転入生もこういうのにはなれてる~という状況で……問題はないです」
「そんな」
「副会長」
徐々に声を小さくしていく愛流をたたみかけようとした男子生徒だが、彼女の言葉に黙り込んでしまった。この会議の中心、生徒会長だ。
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