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「彼女がそう言っているわ。しばらくは様子を見させので問題ないでしょう」
愛流は生徒会長を見た。その顔は凛としている。
「会長がそう言うのであれば。他になければ今回は解散としたいが、なにかあるか?」
副会長の言葉に誰も返事をしない。
「では、解散」
愛流は会議室を出ると大きく背伸びをして玄関へと向かう。
「あ、いた」
玄関で靴を履きかけていた愛流はすっとんきょうな声を上げて声のほうを見た。
「探したよ」
そこには曽根川ひかるが立っている。
「やっぱりまだ帰っていなかったんだ。よかった」
そう表情を緩ませるひかるをみて愛流は顔が熱くなる。
「な、な、な、なんのようかな?」
愛流は右左、上下とせわしなく周りを見る。
「じつは」
「じつは?」
ひかるの顔が近づく。顔でお湯が沸かせるのではないかと思うぐらいの熱さを愛流は感じていた。
「君の名前、聞こうと思って」
ひかるの言葉を聞いたとたん、愛流は顔の熱さを忘れた。
「そんなことで今までなにしてたの?」
「靴があったから、校舎の中にいるんだろうと思って探し回っていたんだ。なかなか見つからなくて大変だった」
「名前のためだけに?」
うなずくひかるを見て愛流はおかしくなった。
「私の名前は天見愛流。一緒に帰ろうか、ひかるくん!」
愛流はひかるの手をつかむと走り出した。
「ひかるくんはこの町も初めてだっけ?」
校門を出たところで愛流は手を離してひかるに振り返る。
「少しは歩いてみたけどまだあまり」
「だったらさ、私が案内してあげるよ」
「助かるけど、でも天見さんの予定があるんじゃないの」
「いいの、いいの。私が言うんだから気にしない」
愛流は三歩ほど前に出て再び振り返る。
「ほら、はやく」
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