半魔物

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「俺はケモノをやる! エレンは鳥を! セレは女を守れ!」 「わかった!」 キースが指示を出すと、それぞれが配置につき武器を構えた。 「よォ」 キースの前には闇のような漆黒の毛を持った狼。 真っ赤な瞳に、半開きの口からは唾液が滴り、尖った牙が顔を覗かせる。 狼は獲物を認識すると、その喉笛に食らいつこうと飛び掛かった。 「雑魚が!」 牙を剥いて目の前に迫りくる狼。 その真っ赤な口の中に、キースは剣を突き刺した。 唾液の混じった鮮血と肉片が飛び散り、頬を汚す。 「うるさいわね……」 頭上で金切り声をあげる怪鳥を睨み付け、エレンは槍を握る手に力を込めた。 鳴き声が止む。 怪鳥は狙いをつけ、巨体からは考えられないほどの速さで一気に降下してきた。 ――来た! 横に跳んで突進を避けると、エレンは無防備な鳥の首に槍を突き立てた。 舞い散る無数の羽。 すぐに体を痙攣させて、鳥は地に墜ちる。 「いやぁーっ!!」 セレの後ろから、ジャネットの悲痛な叫び声が響いた。 「ジャネット?」 ――コロシテクレ…… ――シニタイ…… ジャネットの頭の中に、続けざまに声が聞こえた。 魔物に姿を変えられた、瀕死の半魔物の叫びが流れ込んでくる。 「どうしたの!?」 「いや……いやぁ……」 エレンの問い掛けにも、ジャネットは首を振るだけ。
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