8059人が本棚に入れています
本棚に追加
露店の並ぶ広場に戻ってきた。
連れてこられたのは、一台の露店を兼ねた荷馬車。
高さは大人の背をもう少し高くしたくらい。
木目を生かした温かみのある外装のそれは、正方形に円錐の屋根をくっつけたような形をしていた。
壁の一面は折畳みの棚に加工され、様々な物が乗っている。
獣の革、鮮やかに染められた布、きらきら輝く宝石、色とりどりの香水の瓶まで。
「フォーダム、遅かったやないの」
大きな帽子をかぶった女が口を尖らせて椅子に座っている。
その顔は帽子に隠れてよく見えない。
フォーダムはごまかすように笑った。
「わりぃ。サンドラ、ランバートは?」
「さぁ……朝ごはん食べに行ったんとちゃう?」
サンドラと呼ばれた帽子女は、フォーダムの後ろにいるエレンに気付いた。
目が合った。
「あら! やっと見つかったんね!!」
――やっと?
エレンが疑問に思う中、フォーダムはサンドラにエレンを紹介しようとする。
「ああ。名前は……えーと」
「エレンです」
「エレンはんね! ウチはサンドラっちゅうねん。よろしゅうに」
「サンドラ、エレンに説明しといて」
フォーダムは短く言うと、荷馬車の中に入っていった。
最初のコメントを投稿しよう!