金獅子

4/12
前へ
/469ページ
次へ
「ふーん……あの宝石か? 調べたいなんて世の中には変なヤツもいるんだな」 腕組みをし、男は口を尖らせる。 あんたのほうが十分変よ、とエレンは喉元まで出掛かった言葉をやっとの思いで飲み込んだ。 「みっ、見せてもらえるんやろか? い、いや、見せていただけますか!?」 手を揉みながら、サンドラは不安な笑みを男に向ける。 まだ話は終わっていないのだ。 「条件があるけどな」 男が出した“条件”という単語に、エレンの眉がぴくりと動く。 サンドラはひとりで何度も頷きながら、ぐい、とエレンを男に押しやった。 「わかりました。この娘を差し上げます」 「サンドラッ! なに勝手なこと言ってんのよ!?」 ポカッ、と頭を叩いてサンドラを黙らせる。 男はその様子を笑いながら見守っていた。 「適当に服用意してくれない? あんまり派手じゃないやつね」 「それだけでいいの?」 「いや、明日の朝に迎えにきて」 何かを企んでいるような含み笑いに、エレンの心は晴れなかった。
/469ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8059人が本棚に入れています
本棚に追加