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「ふーん……あの宝石か? 調べたいなんて世の中には変なヤツもいるんだな」
腕組みをし、男は口を尖らせる。
あんたのほうが十分変よ、とエレンは喉元まで出掛かった言葉をやっとの思いで飲み込んだ。
「みっ、見せてもらえるんやろか? い、いや、見せていただけますか!?」
手を揉みながら、サンドラは不安な笑みを男に向ける。
まだ話は終わっていないのだ。
「条件があるけどな」
男が出した“条件”という単語に、エレンの眉がぴくりと動く。
サンドラはひとりで何度も頷きながら、ぐい、とエレンを男に押しやった。
「わかりました。この娘を差し上げます」
「サンドラッ! なに勝手なこと言ってんのよ!?」
ポカッ、と頭を叩いてサンドラを黙らせる。
男はその様子を笑いながら見守っていた。
「適当に服用意してくれない? あんまり派手じゃないやつね」
「それだけでいいの?」
「いや、明日の朝に迎えにきて」
何かを企んでいるような含み笑いに、エレンの心は晴れなかった。
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