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窓から眩しい朝日が射し込んでくる。
通されたのは昨日と同じ客室。
エレンとサンドラ、今日はそこにセレもいた。
「こんな物しかございませんでしたが……」
「おう、さんきゅ」
昨日の約束どおり、服を持って王城へ。
着替えたキースを目の前に、一同は言葉を失った。
――恐ろしく似合わない。
輝く長い金髪と、傭兵の簡素な作りの鎧がひどく不釣り合いだった。
「す、素晴らしい! とととっても似合っていらっしゃる……!」
空々しいお世辞を並べるサンドラだが、声が震えている。
「そうか?」
珍しく真顔で、キースは机に置かれた短剣を手に取った。
窓から射す朝日を受け、その銀の刃がきらりと光る。
キースは自分の豊かな金髪を、空いている左手でわしっと掴んだ。
なめらかな曲線の短剣が、そっと髪に当てられる。
「何を……?」
「よっ」
ブツブツッ、という音と一緒に部屋に見えない衝撃が走る。
「なっ……何やってんの?」
まるで太陽のような――赤みのかかった黄金の髪が、束になってキースの手中にあった。
「あーさっぱりした。邪魔なんだよね、長いのって」
キースは暖炉の前に立つと、燃えている炎に髪の束を投げ込んだ。
あっという間に炎は髪を飲み込む。
「んじゃ、行こーぜ!」
何もなかったように笑うキースに、エレンは不安に思えずにはいられなかった。
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