金獅子

8/12
前へ
/469ページ
次へ
そうこう言っているうちに、軍用の馬屋へと連れてこられた。 丈夫な柵に仕切られたそこには、何頭もの馬が繋がれている。 キースは馬屋の奥まで行き、そこで休憩していた男に呼び掛けた。 「おっちゃん。ちょっと馬貸してね」 「でっ、殿下ッ!?」 王子の変貌ぶりに腰を抜かし、目を丸くする馬番。 今のキースの姿は、長年王家に仕えている馬番でさえ見たことのないものだった。 獅子のたてがみのような、風を含んで揺れる金髪。 シルクやベルベットとは程遠い、簡素な荒い作りのくすんだ鎧。 「俺が来たって他の奴らには内緒な?」 「し、しかし……」 「これで。ね?」 キースは強引に、渋る馬番の手に金色の硬貨を握らせた。 これではもう断れない。 きまりが悪そうな表情を浮かべ、馬番は懇願するように言った。 「……わ、わかりました。でも、早く戻ってきてくださいよ」 「わーかってるって」 キースは鍵を受け取り、指に引っ掛けてくるくると回した。 そして、呆れ顔のエレンに向かって片目を閉じてみせた。
/469ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8059人が本棚に入れています
本棚に追加