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「僕も行く!」
「チビは留守番してな」
キースはセレの額をこつんと叩いた。
セレは頬をぱんぱんに膨らまし、見るからに不満そうだった。
「遊びに行くんじゃねーんだぞ。だいたい馬にも乗れないのに行けるわけないだろ」
「馬に乗れればいいんだね?」
「おう。乗れたら連れてってやるよ」
ここにいるのは戦闘用に飼育された気性の荒い馬だ。
大人でも乗りこなすのが難しいのに、こんな子供に乗れるわけがない。
キースはそう確信していただけに、簡単に約束を取り付けてしまった。
「よっ……とっ」
「セレ!? 何してんの!」
掛け声とともに、セレはエレンが手綱を引いていた馬に登った。
乗り方を、すでに知っていたかのように。
キースを見下ろし、ふふん、と得意そうに笑うセレ。
いくら冗談のつもりだったとしても約束は約束。
「わかったわかった。しょうがねーな……」
馬をもう一頭用意するために、キースは呆れたように笑いながら馬屋に戻っていった。
「そや、言うの忘れてたわ」
馬に乗れないから、という理由で王都に残るサンドラが思い出したように口を開いた。
「最近、仲間になるフリして近づいて、ごっそりお金を奪って逃げる女がいるみたいなんや。気ぃ付けてな」
「なんだか物騒ね……」
「こんな時代やからなぁ」
商人たちはエルザンドに残り、キースはエレンとセレを連れてミセリコルディへと向かった。
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