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闇の中から聞こえた音に、三人は身を硬くする。
辺りは目に見えない緊張に包まれた。
「……いいな?」
小声で確認するキースに、エレンは無言で頷いた。
セレは声を殺したまま腰の短剣に手を添える。
キースは大剣を鞘から抜き、恐る恐る扉を押した。
どんなに気を付けても、音を立てずに錆付いた扉を開けるのは無理だった。
音のせいで相手には入ってきたことがバレているだろう。
何が潜んでいるかわからないため、一瞬でも気は抜けない。
エレンはランプを高く上げ部屋を照らした。
薬品特有の刺激臭が鼻をつき、部屋を取り囲む棚を埋め尽くすのは色とりどりの小瓶。
長い年月のためか、中には茶色く変色しているものもある。
どうやら薬品庫のようだ。
床にはガラスの破片が至る所に散らばっている。
ごちゃごちゃと物が積まれたテーブルの上には、赤黒く何かがこびり付いたビーカーが乗っている。
一歩進むたびに音をたてる床は、この部屋も同じだった。
限られた狭い視界の中で、警戒しながら部屋を見渡す。
いつでも戦闘に入れるように、片手は武器に添えながら。
ガタッ、と部屋の片隅に追いやられた棚の裏から物音が響いた。
確信はすぐに行動へ移る。
「そこか!」
キースは壁と棚の隙間に大剣を突き付けた。
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