半魔物

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「キャーッ! キャーッ!!」 耳を塞ぎたくなるような、女の高い悲鳴が響き渡る。 「黙れ」 「嫌ぁっ! こ、殺さないで……って、えっ?」 ランプの灯りが、闇の中にひとつの影を浮かび上がらせる。 ――女? 若い女が両手を床に付き、腰を抜かして座りこんでいた。 「何者だ」 キースは低い声で尋ねたが、返ってきたのは場の空気に似合わない能天気な声。 「なーんだ、あいつらじゃないんだ。よかったよかった」 ゆったりとした長い衣に、薄い生地のマントを羽織った女。 修道女の服装だ。 肩まで伸びた金の髪は、ところどころの房がオレンジ色に染まっている。 緑色の瞳は大きく開かれ、目の前の剣に向けられたまま。 「ってかさ、この物騒なモノ下ろしてくれない?」 「おまえは誰だと聞いてるだろう!? 答えろ!」 「はいはい。あたしはジャネット。職業は……見てのとおり修道女やってましたー」 普通は剣を目の前にしたら、誰でも震え上がるはずだ。 それがこの女は――ジャネットは少しもそういった素振りを見せない。 納得のいかないキースは、警戒心はそのままで、しぶしぶ剣を引いた。 「よっと」 ジャネットは立ち上がると、衣に着いた埃や砂を手で払う。 「修道女やってたって過去形かよ」 苦虫を噛み潰したような顔で、キースは疑い深い視線を投げた。 ジャネットは少し声のトーンを落として口を開く。 「あたしね……半魔物なの」
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