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「あああああっっ!!」
小さな身体が赤い光を放ち、恐ろしいほど大きなエネルギーが集まってくる。
共鳴するように木々が激しく揺れ、立っているのが困難なほどの暴風が起こる。
紫の髪の女は、自分の身体が震えるのを感じた。
取り返しのつかないことになる前に――エネルギーが膨らむ中、女は眉を吊り上げて言った。
「あなたに用は無いの。さようなら」
巻き上がる風に乗り、煙のように姿を消して。
「待て!! 逃げるなぁぁっっ!!」
精霊の絶叫は、空を切り裂く風の音に掻き消された。
森は静かだった。
動くものは何もない。
木々の隙間から斜めに射す赤い光が、青白い顔に色を添える。
死んだ森にはひとり、ヒトの姿を得た精霊が茫然としていた。
涙は、出ない。
精霊は涙を持たない。
涙が出れば、どんなによかっただろうか。
許さない。
絶対に許さない。
あの女を捜し出して、絶対に殺してやる!!
復讐を胸に、彼女はよろよろと歩き始めた。
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